*define nsa menusetwindow 18,18,2,2,0,1,#BB8866 savenumber 20 rmenu "画像表示",windowerase ,"セーブ",save,"ロード",load,"選択肢まで進む",skip,"回想",lookback,"終了する",reset effect 2,10,400 defaultspeed 10,5,1 transmode alpha effectcut game *start この追加シナリオは、もともと没シナリオとして構成していたものです。 本来は「INVISIBLE MURDER INVISIBLETEARS」編の、また別の可能性ルートとして検討していたものですが、これを投入すると美希ルートがばかり豪華になってしまうことと、視点トリックとしてたいした意味がないことを考慮し、使用から外されました。 \ また 「川の向こうの死体」 「太一の白髪・着物」 「みみみ」 あたりの伏線回収も兼ねています。 \ それでは本編へどうぞ \ goto *title *title lsp 6,"image/x0000.jpg",0 print 2 bgm "bgm/bgm001.ogg" btnwait %0 if %0 == 0 bg black,2:stop:goto *astart if %0 == -1 systemcall load goto *title *astart gosub *abstart goto *title *abstart setwindow 20,345,27,5,22,22,0,2,10,1,1,"image/x0120.jpg",0,330 dwave 2,"sound/se009.ogg" lsp 5,"image/efcc0000.jpg",0,0 lsp 6,"image/bgcc0007.jpg",0 amsp 5,0,0,255 print 1 csp 5 print 2 屋上を風が駆け抜ける。 \ 強い。 圧力のある風だ。 \ 自殺ならびに落下防止用の頑丈なフェンスは、それでも微動だにしない。 \ 網目からは景観。 \ 遠く、片雲さえない紺青の画布に、なまめかしい曲線を描く尾根。 \ 黒須太一は景色に射竦められ佇んでいた。 \ 白髪の少年だ。 \ だが染めている風ではない。 \ 筋張った体つきは、異様に細く見える。 \ 痩せているというより、とぎすまされた体つきである。 \ 一振りの、短剣のように−−− \ dwave 2,"sound/se044.ogg" やがて背後で鉄扉が開く音を、その耳がとらえる。 \ bgm "bgm/bgm012.ogg" 太一「よー」 \ 声をかけた。 \ 友貴と桜庭だった。 \ 太一の悪友だ。 \ 太一「して、ブツは?」 \ lsp 5,"image/tcsh0002.jpg",190,0 print 1 桜庭「ここにある」 \ 桜庭が前に出た。 \ 毅然とした声色。 外見も三人の中で一番大人びている。 \ lsp 5,"image/tcsh0003.jpg",190,0 print 1 桜庭「この大事な場所にな」 \ 精悍な少年は、精悍な股間に精悍に手を突っ込んだ。 \ 太一と友貴の表情が凍てついた。 \ 桜庭の手が陰部のあたりをまさぐる。 \ 桜庭「ん・・・よし、つかんだ」 \ 何をだ。 \ そんな詰問をしたい気分に、傍観者の二人は包まれていた。 \ 桜庭「そら、出るぞ」 \ 何がだ。 \ そんな詰問をしたい気分に、傍観者の二人は引き続き包まれていた。 \ 出てきたのは酒瓶。 \ lsp 5,"image/tcsh0001.jpg",190,0 print 1 桜庭「大吟醸、美少女。どうだ」 \ dwave 2,"sound/se003.ogg" quake 3,200 csp 5 print 1 太一「死ね」 友貴「死ね」 \ 声が重なり、蹴りも重なった。 \ 桜庭は低く呻いてうずくまる。 \ lsp 4,"image/tcst0003.jpg",230,0 print 1 友貴「あーあ」 \ 友貴は汚物を扱う手つきでこわごわと拾う。 \ 消毒が必要だ。 \ 太一はため息をついた。 \ csp 4 print 1 wait 500 手近な場所で、三人は車座に。 \ 酒宴である。 \ しめしあって、授業を早引けしての酒盛り。 \ 「巨乳につぐ巨乳、ニプルにつぐニプルが俺を−−−」 「その水着ってのがさぁ、また面積が小さくて−−−」 「ネット通販でブルマを買おうとすると一万円以上はする昨今−−−」 \ 男の酒盛りなんてこんなものである。 \ 酒は進む。 \ 太一「誓いの日をおぼえてるか、友貴、桜庭」 \ 太一はそよぐ風に洗われた青空を見上げた。 爽やかなブルー。 \ lsp 4,"image/tcst0000.jpg",40,0 print 1 友貴「ああ・・・こんな日だったね」 \ lsp 5,"image/tcsh0002.jpg",300,0 print 1 桜庭「わすれるはずがない」 \ 三人は穏やかに微笑した。 \ そう。 それは大切な思い出。 \ 当時を再現するかの如く、みっつの手を重ねた。 \ dwave 2,"sound/se100.ogg" 「我ら生まれた日は違えども、(童貞と学校)卒業する時は同じ日、同じ時を願わん」 \ 桃園の誓いと呼ばれている。 \ ピーチランドという特殊高級浴場があるのだった。 \ きらめくほどに馬鹿だった。 \ 友貴「僕、もう相手は決めてある」 \ 太一「誰?」 \ 友貴「ゆみこちゃん」 \ 有名ソープ嬢。 \ 太一「あー、あー、駄目! ゆみこちゃんは俺が指名するの!」 \ 太一は両手をバタバタと振る。 \ lsp 5,"image/tcsh0000.jpg",300,0 print 1 桜庭「オレは・・・ゆみこちゃんかな」 \ lsp 4,"image/TCST0002.jpg",40,0 print 1 友貴「かちあってんじゃん!」 \ 太一「おまえ別の娘にしろよ!」 \ lsp 4,"image/TCST0004.jpg",40,0 print 1 友貴「僕は清楚系が好きなの。太一と桜庭はそうだな・・・いつも巨乳巨乳言ってるんだからあやかちゃんとか指名すればいいだろ」 \ lsp 5,"image/tcsh0002.jpg",300,0 print 1 桜庭「ダメだ。 オレは巨乳は困る」 \ lsp 4,"image/TCST0003.jpg",40,0 print 1 友貴「なんで?」 \ lsp 5,"image/tcsh0003.jpg",300,0 print 1 桜庭「胸が激しく揺れているのを見てると、突然意識がなくなるからだ」 \ 太一「乳輪催眠にかかってるんだよきっと」 \ 太一はよく特定局面専用造語をでっちあげて適当なことを言う。 \ lsp 4,"image/TCST0005.jpg",40,0 print 1 友貴「・・・・・キミら馬鹿すぎ」 \ 必然、友貴はツッコミ係になることが多い。 \ 太一「とにかく俺がゆみこちゃんなのっ」 \ lsp 4,"image/TCST0004.jpg",40,0 print 1 友貴「僕だっ」 \ lsp 5,"image/tcsh0002.jpg",300,0 print 1 桜庭「いや、オレだ」 \ 三人は醜く争った。 \ 台無し。 \ wait 500 csp 4 csp 5 lsp 5,"image/TCKT0001.jpg",190,0 print 1 冬子「三馬鹿・・・・お酒くらい隠したら?」 \ 冷たい声が頭上から降ってきた。 \ 太一「む、ハラキリ冬子」 \ lsp 5,"image/TCKT0003.jpg",190,0 print 1 冬子「桐原冬子っ! 脳癌にでもなってるんじゃないのっ?」 \ 長髪の美姫めいた少女は、短気だった。 \ 太一「どうして酒を隠せと?」 \ lsp 5,"image/TCKT0002.jpg",190,0 print 1 冬子「う・・・酒臭い・・・・・」 \ 冬子は三人から顔をそむけた。 \ lsp 5,"image/TCKT0001.jpg",190,0 print 1 冬子「これじゃ駄目ね。 黒須の大好きな宮澄先輩が来るのに、嫌われ確定ね」 \ 太一「なにぬーっ!?」 \ dwave 2,"sound/se18.ogg" ごりっ \ 友貴「ぐほうっ!?」 \ 太一「頼む、耐えてくれ!」 \ 友貴「・・・・・・・・・・・・・」 \ 友貴は喋られなくなった。 \ lsp 5,"image/TCKT0002.jpg",190,0 print 1 冬子「下劣・・・・・」 \ 令嬢である冬子には、正視いたしかねた。 \ csp 5 print 1 lsp 5,"image/TCMM0000.jpg",190,0 print 1 見里「あら、みんな集まってたんですか?」 \ 三人の少女。 \ その先頭が、群青学院放送部部長・宮澄見里その人だ。 \ とても温厚ではあるが、規則の人である。 \ 眼鏡の人でもある。 \ 太一「あ、みみ先輩・・・・」 \ みやす「みみ」さと。 \ lsp 5,"image/TCMM0031.jpg",190,0 print 1 見里「あれ・・・お酒臭くありません?」 \ 太一は冷や汗をかく。 \ 友貴も青い顔で汗をかいている。 \ これは別の種類の汗だ。 \ 太一「コレハ我々ノ汗ノ匂イデス」 \ 太一は強引に誤魔化しにかかる。 \ 見里「そうだったんですか・・・お風呂にちゃんと入らないといけませんね」 \ 天然ボケの人でもあった。 \ 属性盛りだくさん。 \ ついでに言えば美巨乳属性でもあり、太一にはいろいろたまらない。 \ lsp 5,"image/TCMM0002.jpg",190,0 print 1 見里「それより、すごいお知らせがダブルですよ〜」 \ えっへんとタブルの胸を張る。 ブラウスがツンと張る。 男の視線は釘付けだ。 \ 友貴「・・・・・・・・・・」 \ 友貴以外。 \ 太一「お知らせとは?」 \ 太一は美乳に問いかけた。 \ lsp 5,"image/TCMM0000.jpg",190,0 print 1 見里「一つは、この二人・・・佐倉霧さんと山辺美希さんが、正式に放送部に入ることになったというニュースです」 \ lsp 5,"image/TCYM0003.jpg",190,0 print 1 美希「どもー、結局わらじを預けることになりました」 \ ソバージュヘアが可愛らしい美希が、ぺこりと快活に頭をさげた。 \ 苦笑いが似合いそうな少女だった。 \ 太一「うむ。俺が存分にそのわらじをあっためてやろう、美希君」 \ 美希「よろしくお頼み申す」 \ 太一「・・・最高にホットなメンズ・ポジションでな」 \ lsp 5,"image/tcym0021.jpg",190,0 print 1 美希「と? それはどこでありましょうや?」 \ 太一「なぁに、ちょいと血液を集中させるだけでたちまちマグマ・スポットさ」 \ 美希「はぁ」 \ 太一「ま、よろしくだ。 霧ちんもな」 \ いつも美希のそばにいる、ショートヘアの少女にも愛想を振りまく。 \ lsp 5,"image/TCSK0003.jpg",190,0 print 1 霧「・・・・はー」 \ 霧は男性があまり得意ではない。 \ 気の入らない返事に、しかし太一は咎めるでもなくニコニコしていた。 \ csp 5 print 1 太一「で、もう一つのお知らせと言うのは?」 \ lsp 5,"image/TCMM0000.jpg",190,0 print 1 見里「はい。市のCFが今度開局されるんですけど、そのアンテナがここの屋上に設置されます。ご存知ですね?」 \ 太一と桜庭はカクカクと頷く。 \ CFというのはコミニティFMの略。 \ 地域密着型のラジオ放送。 \ lsp 5,"image/TCMM0031.jpg",190,0 print 1 見里「で、私たちの放送部でも番組を作ってみないか問いことになって・・・ほら、群青っていい噂ないじゃないですか。」 \ 見里「で、少しでもそういった世情を緩和できたらという・・・・」 \ csp 5 print 1 見里は語る。 \ 身振り手振りをぱたぱたと可愛らしくまじえて。 \ その動作で、美乳はゆれたり傾いたり寄ったり離れたり変形したり切ない風に身をよじらせたり童女のような無邪気さで跳ね回ったり淑女のようになったり娼婦のようになったりした。 \ 桜庭「ぐぅぐぅ」 \ 桜庭は寝ていた。 \ 友貴「・・・・・・・・・・・・・・・・」 \ 友貴は唇の端から泡を。 \ 太一「ふやふや〜」 \ 太一は唇の端からヨダレを。 \ lsp 5,"image/TCKT0003.jpg",190,0 print 1 冬子「エロ猿!」 \ dwave 2,"sound/se003.ogg" quake 3,200 太一「ごっ!?」 \ 冬子が太一を殴る。 一本拳だった。 \ 見里「・・・・というそれはもうゴイスな計画が・・・って、どうしました? 桐原さん?」 \ lsp 5,"image/TCKT0005.jpg",190,0 print 1 冬子「いいえ」 \ 素っ気なく冬子は顔を伏せた。 \ 人付き合いは苦手なのだ。 \ そんなぎこちない冬子の態度を、内心微笑ましく思いながら、太一は気絶した。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0007.jpg",0 print 1 そして目が覚めて。 \ 太一は一人だった。 \ 太一「んんー」 \ 伸びをする。 \ ホコリをはらい、帰宅した。 \ wait 3000 csp -1 print 1 携帯電話のアンテナは三本立っていれば、電波状態も万全ということだ。 \ 一本だと少々弱い。 \ 二本でもいまいち弱い。 アンテナのゲージは、パワーを思わせる。 \ 三本ならフルパワー。 通じるぞ、という感じがする。 \ そんなことをぼんやりと考えたのがいつのことかは憶えていないのだが、平和で、退屈で、静かで、自動的で、思索するにたる気力が無かった頃の俺は、 \ かような印象を増幅して脳内に新たなイメージを喚起するに至ったわけでもある。 \ だから三本越えたら、時空さえも超えてしまうのではないかとか。 \ そんな中学生レベルの妄想で、死ぬまで暇を潰しそうとか思っていた。 \ 潰すまでもなかった。 \ wait 2000 lsp 6,"image/bgcc0000a.jpg",0 print 1 雑草にまとわりついた朝露の感触が、鼻先に落ちた。 \ 太一「う、つめて・・・」 \ 俺は目覚めた。 \ 見里「・・・・・」 \ 近くに、少女がいた。 こいつはみみみ。 漢字で書くと美々美。 義理の妹だ。 \ 毎朝起こしに来てくれる。 \ 美々美「もーお兄ちゃん、いいかげんに起きてよー」 \ わかったよ。 \ 美々美「お兄ちゃんはみみみがいないと本当にダメなんだからー」 \ 太一「・・・・ハハッ」 \ 俺は苦笑した。 \ 最近、少しおしゃまになってきたこいつの言動は、昔とは(略) \ 学校に行かないと。 自転車を引っ張り出す。 \ 太一「置いていくぞー」 \ 美々美「あーん、まってよー」 \ 義理の妹を後ろに乗せて、学校に。 \ bgm "bgm/bgm005.ogg" csp 6 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0005.jpg",0 print 1 美々美「こうして乗せていってもらうの、久しぶりだね」 \ 太一「そうか?」 \ そうだったかも知れない。 \ 太一「なんか・・・けっこう弾力が・・・」 \ 美々美「え?」 \ 太一「胸が・・・その・・・」 \ 結構大きい。 ぐいぐい当たる。 こんな大きかったっけ? \ 美々美「えっち」 \ dwave 2,"sound/se003.ogg" quake 3,200 ごちん \ 太一「あたっ」 \ 太一「冗談は抜きにして、別に毎日乗せて行ってもいいんだぞ?」 \ 美々美「朝練があるの!」 \ 太一「さいで」 \ 美々美「それにお兄ちゃん、あの人とばかり・・・」 \ 太一「あの人って・・・冬子か?」 \ 美々美「・・・」 \ 太一「おいおい、俺は冬子はなんでもないって。 変な勘ぐりはよせよ」 \ 美々美「・・・そうなのかな」 \ 太一「そうだよ。 だいたいあんなヒステリー、俺の好みじゃないっての」 \ 美々美「お兄ちゃん、結構人気あるんだよ?」 \ 太一「マジか!?」 \ そんな話、聞いたことない。 \ 美々美「うちのクラス、ファンクラブまであるんだから」 \ 太一「だ、だって俺、一度も告白されたことないぞ?」 \ 美々美「だからぁ、牽制しあってるの!」 \ 太一「たくさんのおにゃのこが俺を巡って牽制っ!?」 \ 美々美「おにゃのこって言った・・・この人・・・」 \ 太一「うーむ。どうにも信じられないな」 \ 美々美「・・・あたしだって信じたくないよ」 \ 太一「え? なんだって? 聞こえないよ」 \ 美々美「もう、馬鹿!」 \ dwave 2,"sound/se003.ogg" quake 3,100 ばし! \ 太一「いてっ! いてーよ!」 \ 殴られた。 \ わけわかばやし。 \ 美々美「・・・」 \ それっきり義理の妹は、黙り込んでしまう。 \ わけのわからないまま、俺はペダルをこいだ。 \ stop csp 6 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm013.ogg" lsp 6,"image/bgcc0006.jpg",0 print 1 いつもとかわりない教室の、幾何学的な机の並びは、空気中に残った人の体温を剥奪する。 \ 冬子の机に近寄る。 冬子の机は赤い。 冬子の赤い机に話しかける。 \ 太一「よっ」 \ lsp 5,"image/TCKT0002.jpg",190 print 1 冬子「あんたね、もうちょっと考えて行動なさいよ」 \ 太一「なんの話だよ。 わけわかんねーぞ」 \ lsp 5,"image/TCKT0001.jpg",190 print 1 冬子「あんまり妹とべたべたしてると、シスコンだって思われるわよ」 \ 太一「はああ? んだそりゃ? 確かに美々美は義理の妹だけど、兄妹だぞ? 肉親のこと自転車に乗っけた程度で・・・っておまえ、どうして知ってるんだよ」 \ lsp 5,"image/TCKT0004.jpg",190 print 1 冬子「え?」 \ 太一「自転車に乗せて通学してたの、どっかで見たのか? けどおまえ俺よりはやく学校に来てたし・・・」 \ lsp 5,"image/TCKT0003.jpg",190 print 1 冬子「うるさいわね、聞いたのよ!」 \ 太一「誰にだよ」 \ 冬子「友達に!」 \ 太一「友達って、おまえいないとか言ってなかったか? 庶民とはつきあえないとか何とか?」 \ lsp 5,"image/TCKT0006.jpg",190 print 1 冬子「う、うきゅ・・・」 \ 太一「なにがうきゅ、だ。 ゲームのヒロインみたいなこと口走りやがってた、気でも違ったか」 \ 太一「・・・おまえ、もしかして焼き餅焼いてるんじゃないか?」 \ csp 5 print 1 冬子「もきーーーーーーーーーっ!!!」 \ 怒り出した。 いつものことである。 \ 授業が始まるまで、俺は廊下に非難した。 \ stop csp 6 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm002.ogg" lsp 6,"image/bgcc0009.jpg",0 print 1 昼休み。 \ 友貴と桜庭。 食事をしている。 \ 俺は仲間に加わる。 \ 太一「よう」 \ lsp 5,"image/tcst0006.jpg",190 print 1 友貴「友情は見返りを」 \ lsp 5,"image/tcsh0000.jpg",190 print 1 桜庭「求めない」 \ 太一「昨日のテレビ見たか?」 \ lsp 5,"image/tcst0006.jpg",190 print 1 友貴「友情は見返りを」 \ lsp 5,"image/tcsh0000.jpg",190 print 1 桜庭「求めない」 \ 太一「ははは、そうかそうか」 \ 太一「あとニュースサイト巡回してたらさー」 \ lsp 5,"image/tcst0006.jpg",190 print 1 友貴「友情は見返りを」 \ lsp 5,"image/tcsh0000.jpg",190 print 1 桜庭「求めない」 \ 太一「で、とうとうメジャーデビューってわけだ」 \ lsp 5,"image/tcst0006.jpg",190 print 1 友貴「友情は見返りを」 \ lsp 5,"image/tcsh0000.jpg",190 print 1 桜庭「求めない」 \ csp 5 print 1 楽しく会話した。 \ 悪友には違いないが、二人ともいい奴だ。 \ 物語には参加してこないが、同性の友人代表という役目をいやな顔ひとつせずに担ってくれる。 \ 得難い友だった。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm012.ogg" lsp 6,"image/bgcc0008.jpg",0 print 1 霧がいた。 \ 俺のことを慕っている下級生だ。 \ 太一「霧ー!」 \ 呼びかけると、霧は笑顔で駆け寄ってきた。 \ lsp 5,"image/TCSK0006.jpg",190 print 1 霧「先輩」 \ 太一「メシは?」 \ 霧「食べました」 \ 太一「お弁当なんだよな、霧は。 いいよなぁ」 \ lsp 5,"image/TCSK0007.jpg",190 print 1 霧「先輩は学食ですか?」 \ 太一「そうなんだ、学食でさ。 さすがにそろそろ飽きてきた」 \ 霧「だったら・・・わたしがお作りしましょうか?」 \ 太一「いやあ、そんなの悪いしさ・・・」 \ 霧「そうですかぁ?」 \ 太一「でもたまにはいいかな・・・霧の手料理も食べてみたいし」 \ lsp 5,"image/TCSK0006.jpg",190 print 1 霧「あはっ♪」 \ そう喜ばれると、こっちまで嬉しくなってくる。 \ 霧「じゃあ今度、作ってきますから」 \ 太一「ああ、楽しみにしてるよ」 \ 太一「お礼に・・・そうだな・・・ゲーセンでとったこの人形をやろう」 \ 霧「わあ、ありがとうございます」 \ wait 500 lsp 5,"image/TCSK0007.jpg",190 print 1 霧「これ何の人形ですか?」 \ 太一「さあ・・・何の人形だろうな。 アニメか何かか?」 \ 霧「わかりません・・・」 \ 霧「でも先輩に似ているかも・・・ほら」 \ 太一「俺に似ている? そうかぁ? だいたい俺、髪の毛白くないぞ」 \ 霧「それもそうですね」 \ 霧は人形を抱きしめて、にっこり笑った。 \ lsp 5,"image/TCSK0006.jpg",190 print 1 霧「ありがとうございます先輩、宝物にします」 \ 太一「いや、そんなたいしたものじゃないし・・・そこまで喜ばれるとこっちが困るよ」 \ 霧「ごろごろ」 \ 人形にほおずりする霧。 \ 太一「あはは・・・」 \ 気が抜けた。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm012.ogg" lsp 6,"image/bgcc0007.jpg",0 print 1 放課後、屋上に来た。 \ 曜子姉がいる。彼女は俺の・・・姉みたいな人だ。 \ 近所に住んでいる。 \ 成績優秀、運動神経抜群。 \ 俺のことを可愛がってくれるが、最近はちょっと恥ずかしい。 \ 彼女は放送部の部長だ。 能力を考えれば、当然だろう。 \ 二年生の頃から、早々に部長の立場を引き継がれている。 お気楽な三年生の人たちはさっさと引退したがっていたし。 \ lsp 5,"image/TCHY0000.jpg",190 print 1 曜子「太一だ」 \ 彼女は俺をみつけると、子犬みたいに駆け寄ってきた。 \ 曜子「部活に来てくれたの?」 \ 太一「んー、ちょっと様子見に」 \ lsp 5,"image/TCHY0002.jpg",190 print 1 曜子「そうなんだ」 \ 複雑な表情。 \ lsp 5,"image/tchy0005.jpg",190 print 1 曜子「太一、部員なのにな・・・本当は毎日来ないといけないのにな」 \ 太一「うっ・・・そんな泣きそうな顔されても」 \ 彼女は泣き虫だ。 \ 曜子「だって、手伝ってくれるって言ったのに・・・・」 \ 太一「手伝うって・・・言ったけどさ・・・あのときは、まだ・・・」 \ 太一「美希も生きていたし・・・」 \ 曜子姉の表情が凍る。 \ 山辺美希。 \ 彼女だった。 \ よくできた彼女。 いつも弁当を作ってくれた。 \ けど・・・事故で死んだ。 \ あのときの記憶は、今だに俺の胸を突き刺すことがある。 \ 曜子「あの・・・その・・・ごめんなさい・・・」 \ 泣かしてしまった。 \ 罪悪感。 \ 太一「あ、別に曜子ちゃんのことが嫌いってわけじゃないよ?」 \ 曜子「本当に?」 \ 周囲を見渡して人がいないことを確かめる。 \ 太一「もちろん。大好きだよ」 \ lsp 5,"image/tchy0003.jpg",190 print 1 曜子姉の顔がパッと輝く。 \ 曜子「じゃあ・・・だっこしてくれる?」 \ はじまったか。 \ 太一「うん。おいでよ」 \ 甘えだすと、精神年齢低下しちゃうんだよなぁ。 \ 人に見られない限り、いいんだけど。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0003b.jpg",0 print 1 はあ、疲れた。 \ うちには両親はいない。 \ 両親とも外国に働きに行っている。 \ それでみみみは俺の保護者のように振る舞っているわけだ。 \ 太一「けど・・・俺が守ってやらないとな・・・」 \ アイツが幸せになるまでは。 \ いつか好きな男が出来るまでは・・・・。 \ ドキン! \ 太一「あれ?」 \ なんだ? この胸の痛みは? \ 俺・・・あいつのこと・・・・? \ 太一「ええい、考えるのはやめだやめだ!」 \ 太一「寝ちまえ!」 \ ・・・。 \ ・・・・・・。 \ ・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 2000 lsp 6,"image/bgcc0007gs.jpg",0 print 1 紆余曲折あって、俺たちは仲直りした。 \ そしてアンテナを建てはじめた。 電波に乗せて。 \ 俺たちの思いを、友情を。 世界にまき散らすために。 \ 素晴らしいことだった。 \ 先輩――― \ 冬子――― \ 霧――― \ 桜庭――― \ 友貴――― \ さあ、みんなの力で、やろう。 \ wait 1000 そして塔が建った。 \ 俺たちの部活の象徴である・・・タワー。 \ 今はシーツがかぶせられている。 \ そこにエイリアンが急襲してきた。 \ 俺はカラデで戦った。 \ 上下左右のスキテキシュと攻防を繰り広げた。 \ そしてついにはエイリアンとも友情で結ばれた。 \ 友情すげえ。 不可能はないのか? \ エイリアンは美希でもあった。 量子力学的にそうだった。 \ だけどエイリアンは敵だ。 悲しいことだけど。 \ 殺すか殺されるかなのだった。 \ ・・・・・・・・・・・・・。 \ さらに時は流れ、アンテナは成仏した。 \ だけど俺は諦めない。 戦い続ける。 \ 夢にまで見た、他愛ない部活動。 \ 普通のガクセーらしい日常。 \ 人としての思い出。 \ そして戦いは。 \ 続く―――――― \ csp -1 print 1 wait 2000 目が覚めた。 \ 体は動かない。 \ せっかくだから俺は二度寝するぜ。 \ そして回想シーンに入ることにした。 \ ・・・。 \ ・・・・・・・。 \ ・・・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 2000 bgm "bgm/bgm020.ogg" lsp 6,"image/bgcc0000a.jpg",0 print 1 俺はそこに立っていた。 \ 目の前に、見里先輩がいる。 \ 見里先輩は「みみ」であり「みみみ」であり「美々美」である。 \ これ以前の記憶は判然としない。 \ モードが違ってしまっている。 \ 自分がかなり自動的になっていることがわかる。 \ 今まで積み重ねてきた記憶と経験で、俺は擬態している。 \ 太一「・・・・・」 \ 見里「ど、どうしたんです・・・いったい・・・わたしに何の用が・・・・?」 \ 息切れしている。 それにひどく緊張しているようだ。 \ そりゃそうだ。 追いかけっこをしたんだから。 \ とうとう、追いつめた。 \ 鬼交代のチャンス。 俺がよっていくと、ビクッっと震えた。 \ 見里「こ、来ないで・・・お話すれば・・ね?」 \ 見里「ぺけくん・・・・落ち着いて・・・・」 \ 気がつくと俺はナイフを「そうび」していた。 \ なんて魅力的なんだ先輩。 \ 太一「・・・・ハハッ」 \ stop csp -1 print 1 wait 1500 bgm "bgm/bgm005.ogg" lsp 6,"image/bgcc0005.jpg",0 print 1 見里「・・・・・・・・・・」 \ 先輩を後部座席にくくりつけて、自転車をこぐ。 \ 学校に向かう。 あ、この場面、既見感。 \ そうだ、義理の妹との通学シーンだ。 \ 朝起こしに来て軽口を叩いて朝食を作ってくれてほれぼれするタイミングで自転車の後部座席に乗ってくるのだ、義理の妹というやつは。 \ 見里「・・・・・・・・」 \ ノイズのないクリアな記憶。 \ 太一「そうか?」 \ 太一「なんか・・・けっこう弾力が・・・・」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「胸が・・・その・・・・」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ dwave 2,"sound/se003.ogg" quake 3,200 ごちん \ 脇に垂れた先輩の頭部が、電信柱を叩いた。 \ そのペインはダイレクトに俺に伝わってきた。 \ 太一「あたっ」 \ 太一「冗談は抜きにして、別に毎日乗せていってもいいんだぞ?」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「あの人って・・・冬子か?」 \ 見里「・・・」 \ 太一「おいおい、俺は冬子はなんでもないって。 変な勘ぐりはよせよ」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「そうだよ」 \ 太一「そうだよ。 だいたいあんなヒステリー、俺の好みじゃないっての」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「マジか?」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「だ、だって俺、一度も告白されたことないぞ?」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「たくさんのおにゃのこが俺を巡って牽制っ!?」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「うーむ。どうにも信じられないな」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「え? なんだって? 聞こえないよ」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ 太一「いてっ! いてーよ!」 \ 見里「・・・・・・・・」 \ stop csp 6 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm013.ogg" lsp 6,"image/bgcc0006.jpg",0 print 1 学校。 \ 冬子。 \ 太一「よっ」 \ lsp 5,"image/TCKT0004.jpg",190 print 1 冬子「太一・・・・? なに・・・その・・・血・・・?」 \ 太一「なんの話だよ。 わけわかんねーぞ」 \ 冬子「何言ってるの? その血・・・いったい・・・?」 \ 太一「はああ? んだそりゃ? 確かに美々美は義理の妹だけど、兄妹だぞ? 肉親のこと自転車に乗っけた程度で・・・っておまえ、どうして知ってるんだよ」 \ 冬子「は?」 \ 太一「自転車に乗せて通学してたの、どっかで見たのか? けどおまえ俺よりはやく学校に来てたし・・・」 \ 冬子「たい・・ち?」 \ 太一「誰にだよ」 \ lsp 5,"image/TCKT0003.jpg",190 print 1 冬子「ちょっと、嘘でしょ・・・・しっかり、してよ」 \ 太一「友達って、おまえいないとか言ってなかったか? 庶民とはつきあえないとか何とか?」 \ csp -1 print 1 冬子「うわ、あぁ・・・・」 \ 太一「なにがうきゅ、だ。 ゲームのヒロインみたいなこと口走りやがってた、気でも違ったか」 \ ナイフを取り出す。 \ 太一「・・・おまえ、もしかして焼き餅焼いてるんじゃないか?」 \ 近寄る。 \ 冬子「あ、やだ、いゃ・・・・・・っ!?」 \ stop csp 6 print 1 wait 2000 bgm "bgm/bgm002.ogg" lsp 6,"image/bgcc0009.jpg",0 print 1 友貴と桜庭。 俺は二人の背後から近づく。 \ 太一「昨日のテレビ見たか?」 \ 二人は何か口にしたようだった。 \ 太一「ははは、そうかそうか」 \ 桜庭を*した。 \ 太一「あとニュースサイト巡回してたらさー」 \ 友貴がうめき声を漏らす。 \ 友貴を*した。 \ 太一「で、とうとうメジャーデビューってわけだ」 \ デス桜庭「・・・・・・・・」 \ デス友貴「・・・・・・・・」 \ 楽しく会話した。 \ 悪友に違いないが、二人ともイイ奴だ。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm012.ogg" lsp 6,"image/bgcc0008.jpg",0 print 1 霧がいた。 \ 太一「霧ー!」 \ 呼びかけると、霧は逃げた。 \ 霧「・・・・っ!」 \ 追いかける。 \ 太一「メシは?」 \ 霧「はっ、はっ・・・っ!」 \ 長い廊下を走る。 \ 太一「お弁当なんだよな、霧は。 いいよなぁ」 \ 霧「・・・来るなっ・・・・来るなぁ!」 \ 太一「そうなんだ、学食でさ。 さすがにそろそろ飽きてきた」 \ 走る。 \ 霧「はっ、はっ、はっ」 \ どこか遠いところで警報が鳴っていた。 \ 太一「いやあ、そんなの悪いしさ・・・」 \ 霧「来るなっ・・・はっ、来る・・・っ」 \ 太一「でもたまにはいいかな・・・霧の手料理も食べてみたいし」 \ 霧「だ、誰かっ!」 \ 霧「殺されるっ、誰かっ!!」 \ 太一「ああ、楽しみにしてるよ」 \ 太一「お礼に・・・そうだな・・・ゲーセンでとったこの人形をやろう」 \ ナイフを取り出す。 二本だ。 \ 両手にぶらさげて走る。 \ 霧「はっ・・・はっ、は、っ、はっ・・・・」 \ 追いかける。 廊下を駆ける二人。 \ 霧「はっ、ど、どうかしてるっ・・・」 \ 太一「さあ・・・何の人形だろうな。 アニメか何かか?」 \ 霧「はっ、は・・・・んっ・・・」 \ 蹴つまずく。 \ 霧「ひゃっ!あっ、ああ、はっ・・・」 \ 一気に距離が縮む。 \ 太一「俺に似ている? そうかぁ? だいたい俺、髪の毛白くないぞ」 \ 霧「いや、いやぁぁっ」 \ 距離0。 \ 見下ろす。 \ 両手にはナイフ。 \ 霧「あは、ははは・・・・はは・・・」 \ 俺も微笑む。 \ これなら、ナイフを使わずに済む。 \ 足首を掴んで、引き寄せる。 \ 霧は笑っている。 \ 俺はのしかかる。 \ 84%――― \ どこかでガラスの割れる音がした。 \ 太一「いや、そんなたいしたものじゃないし・・・そこまで喜ばれるとこっちが困るよ」 \ 霧「・・・・・・・・」 \ 床に頬をくっつける霧。 ごろごろ。 \ 太一「あはは・・・・」 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm013.ogg" lsp 6,"image/bgcc0007.jpg",0 print 1 放課後。 屋上に来た。 曜子ちゃんがいる。 \ 曜子「太一・・・・」 \ 太一「んー、ちょっと様子見に」 \ 曜子「・・・あなた・・・・・」 \ じっと俺を見つめている。 \ 曜子「そう・・・もう戻れなくなったの」 \ 太一「うっ・・・そんな泣きそうな顔されても」 \ 曜子「あなたも長くない・・・人として生きる力さえ失って・・・・」 \ 曜子「死に引き寄せられるか、偶然に殺されるか」 \ 太一「手伝うって・・・言ったけどさ・・・あのときは、まだ・・・」 \ 太一「美希も生きていたし・・・」 \ 曜子ちゃんの表情が凍る。 \ 太一「あ、別に曜子ちゃんのことが嫌いってわけじゃないよ?」 \ 曜子「本当に?」 \ 太一「もちろん。大好きだよ」 \ 曜子「なら・・・抱きしめて。 優しくして」 \ 太一「うん。 おいでよ」 \ 彼女が寄ってくる。 腕の中におさまる。 \ 曜子ちゃんは声もなく泣く。強く、首をかき抱いた。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 ・・・・・・・・・・・・・・・・。 \ wait 1000 塔を建てよう。 \ 俺たちの塔を。 \ 天高く。 \ 愚かしく。 \ そしたら・・・・きっと寂しくない。 \ 一人でも、組み立ててみせる。 \ そうして世界中に呼びかける。 \ そうすれば―――― \ stop csp -1 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm012.ogg" lsp 6,"image/bgcc0014.jpg",0 print 1 帰宅途中、田崎による。作業ははかどった。 \ まだ材料は少し足りないが、まずは順調だ。 \ 食料を仕入れる。 ツケで買える。 だが世界が崩壊して久しい。 \ ツケなんて、無意味じゃないか? \ 太一「ね、曜子ちゃん?」 \ 彼女が微笑んでいる。 あたたかい気持ちになる。 \ 鬱陶しい。すぐ消す。 \ けどどうして。 \ メモは、なおも張られていたんだろう―――― \ 一瞬だけ、胸が締め付けられた。 \ その感情を判別することは、今の俺にはできない。 \ もうじき暗くなる。 心もろともに。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 翌日。 \ wait 1000 教室。 \ wait 1000 待つ。 \ wait 1000 日差しが強い。 \ 熱による影響、後で調べておこう。 塔はとても天に近いのだから。 \ でも、これさえ完成すればタダで「人」という字は支えあっている。 \ 電波代はいらない。 青春に金なんて必要ないんだ。 \ 悪しき商業主義は滅びろ。 \ でもこのタワー型のが完成すれば。 \ 電話みたいに「みかか」することはない。 \ 無料配信だ。 \ この情報にあふれた現代社会を、さらに無料の情報で汚染するのだ! \ ・・・・・・・・・・・・・・・・。 \ 待つ。 \ 変化はない。 \ 太一「・・・ん?」 \ 美希の気配を感じた。 \ 美希のところに行くことにした。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 bgm "bgm/bgm014.ogg" lsp 6,"image/bgcc0007fa.jpg",0 print 1 美希は屋上にいた。 \ 俺もそっと屋上に出た。 \ 美希は「塔」の前に立っている。 \ 太一「美希」 \ lsp 5,"image/TCYM0001.jpg",190 print 1 美希「PYF「E・・・っ!」 (先輩・・・・っ!) \ 美希が何事か呟いた。 \ 意味は分からない。 \ 太一「ぴいわいえふ? なに?」 \ lsp 5,"image/TCYM0002.jpg",190 print 1 美希「U<UIをEzW、YW@R?」 (な、何を言ってるんです?) \ おかしいな。 人の言葉に聞こえない。 \ 人じゃない? 確かにその可能性はある。 \ 美希「C;ICKTzB4・・・」 (それにその格好・・・・) \ 太一「さては・・・地球外生命体だな」 \ エイリアンだ。 \ 俺が見抜いたのを見抜いたのか、美希の顔から笑みが消えた。 \ lsp 5,"image/TCYM0001.jpg",190 print 1 美希「・・・・GLFS@BW@RT」 (霧はどこですか) \ 太一「そうか。 それが宇宙語か」 \ 太一「この俺に挑むというのか」 \ 太一「だが・・・おまえがもし改心し、部活に加わるというなら・・・・俺たちの塔を建てる、この偉大な部活動に携わるというのなら、きしむ心をやさしく包み込む」 \ 美希「・・・CKA」 (・・・その血) \ 美希「GLF、S@BW@R」 (霧は、どこです) \ 俺は塔に向かう。 \ 隣を通りかかると、美希は大きく飛び退いた。 \ 太一「さあ、これが俺たちの塔・・・トモダチの塔だ!!」 \ dwave 2,"sound/se057.ogg" シーツを取った。 未完成の「塔」が出てきた。 \ みんなの力が一つになった逸品だ。 \ アンテナの形にするのは苦労したものだ。 \ みんなが硬直してくれらからこそ、はじめて実現できたと言える。 \ lsp 5,"image/TCYM0004.jpg",190 print 1 美希「・・・・・・・・・・・・」 \ 美希は惚けていた。 \ 理解が訪れることもなく、停止していた。 \ 太一「完成したあかつきには、世界に向けて語りかけることができる」 \ 太一「これって、今の俺には必要なことだと思うから」 \ 太一「らーららーらららーららーらららーらーらーらーらーらららーらーらーらららー」 \ 「トモダチの歌」 \ 作詞/俺  作曲/小生  編曲/我 \ 太一「らんららーらーららららーらーらーらーらららーらーらーらーーらーらーらーらーらららららーらーらーらららららららー」 \ 太一「ららららららーららーらららーらーーらーらららーらーらーらーらーらららーらーらーらららららーらーらら」 \ 太一「どうか」 \ lsp 5,"image/TCYM0005.jpg",190 print 1 美希「・・・RB@EW@R,」 (・・・凄いですね) \ 美希は微笑んだ。 \ 言葉はわからないが、理解してくれたようだ。 \ 自慢のカラデを見せずに済みそうだ。 \ 平和万歳。 平和を守るため軍隊を派遣してその費用は属国というか52番目の州が持つのだ。 \ lsp 5,"image/TCYM0001.jpg",190 print 1 美希「3K・・・SB¥W@GLAYT@X@EL)4IZT0;WUENQEW@R;S・・・TKD@)FS@BI?」 (あの・・・ところで霧ちんが材料に使われていないみたいですけど・・・彼女はどこに?) \ なんとなく霧のことを問いただした気がする。 \ 太一「・・・さあ。 見てないな」 \ 美希「C4W@RT」 (そうですか) \ 美希の膝が震えている。 \ 太一「あ」 \ 唐突に俺は気づいた。 霧はいた。 美希からはみえない、背後の部分に。 \ 卍みたいな形に加工して組み込んである。 \ あちこち折れてるけど一応まだ霧だ。 \ 霧後だけどね。 \ でも美希はエイリアンなので話す必要ないと思った。 \ 太一「寒いのか地球外の友よ?」 \ lsp 5,"image/TCYM0002.jpg",190 print 1 美希「E5・・・W@F0QDFB;W@」 (いえ・・・ではわたしはこれで) \ 太一「・・・・・・・・・」 \ csp 5 print 1 美希が背を向けた。 かくん、としゃがみ込む。 \ 腰が抜けたようにも見える。 何事か呟いている。 \ 太一「どうした? やっぱりエイリアンの故郷である月面より重力があるせいで歩きにくいのか?」 \ 美希「・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・0QDK3D,4B@;・・・」 (・・・動け・・・動け・・・動け・・・動け・・・わたしの足、動け・・・) \ ぶつぶつと呟いている。 危ないヤツだ。 \ 太一「なあ、ところで良いエイリアンは死んだエイリアンかエイドリアンだけだと思わないか?」 \ 美希「・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・4B@;・・・」 (・・・動け・・・動け・・・動け・・・動け・・・動け・・・動け・・・動け・・・動け・・・) \ 太一「で、美希。 おまえも部活に参加するだろ?」 \ 近寄って肩に手をかけようとする。 美希は弾かれたように立ち上がる。 \ そのままぎこちない早足で校内に。 \ 太一「あ、おーい!」 \ 行ってしまった。 \ ・・・・・・・・・・・・・・・。 \ stop csp -1 print 1 wait 1000 俺は家に戻り、じゃがいもをかじに、水を飲み、寝台に横たわった。 \ 今日は異星人と出会った。 \ 太一「けど・・・俺が守ってやらないとな・・・」 \ この青い地球を。 あの・・・キュートなエイリアンから。 \ 太一「あれ?」 \ ドキドキしていた。 \ これは恋? 芽生えたのか? \ 太一「ええい、考えるのはやめだやめだ!」 \ 太一「寝ちまえ!」 \ ・・・。 \ ・・・・・・。 \ ・・・・・・・・・。 \ wait 2000 bgm "bgm/bgm014.ogg" 起きた。 まだ夜中だった。 いやな予感がした。 \ 俺の意識はますます鋭敏になって、街を広く覆っていた。 \ ・・・・・・・・・・。 \ wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0014b.jpg",0 print 1 田崎食料。食事。 \ wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0011c.jpg",0 print 1 学校前に来て、見上げる。 \ ・・・・・・・・・・・。 \ wait 1000 太一「・・・・・・・・・・・・・・・」 \ 燃えていた。 \ トモダチの塔が燃えていた。 火柱だ。 \ ものすごい、匂い。 圧力ある熱気。 \ これはもうダメだ。 \ 消化できるレベルじゃない。 \ 灰になってしまう。 \ 太一「まいったな」 \ 作り直さないと。 \ でも、材料そんなにあったかなあ? \ トモダチでないといけない。 \ トモダチはあとどれくらい残っていただろうか。 \ 太一「いや」 \ どんなに困難でも、やらないと。 \ 頑張ればどんな夢だって叶う。 \ 信じれば力になる。 \ 希望は明日を作るんだ。 \ これら美しき「普通」が汚され蹂躙されることなどありえない。 \ 人として最高の決断であり、ありようなのだ。 \ みんなが言うからきっとそうなのだ。 \ だから俺だって頑張れば――― \ 感覚を広げる。 \ 自分の知覚力が神がかっているのを感じる。 \ 校内に一人。 \ 外に向かっている。 \ 街の方にも誰かいる感じがする。 \ 都会の方は・・・さすがにわからない。 \ まずは手近なところから頑張ろう。 \ 太一「らーららーらららーららーらららーらーらーらーらーらららーらーらーらららー」 \ 「トモダチの歌・二番」 \ 作詞/僕  作曲/予  編曲/我輩 \ 太一「らんららーらーらーららららーらーらーらーらららーらーらーらーーらーらーらーらーらららららーらーらーらららららららー」 \ ・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1500 lsp 6,"image/bgcc0008b.jpg",0 print 1 廊下で捕捉。 俺は無音となる。 \ 低い姿勢で背後から忍び寄って、ナイフで足を刈る。 \ ぷちっ、とアキレス腱が切断された。 \ 美希「ぎゃっ!?」 \ 悲鳴。 これは理解できた。 \ 美希は一歩も動くことが出来ないまま、すとんと尻餅をつく。 \ 太一「あきれーす・かったぁー」 \ 棒読みのヒーロー口調で技の名を告げた。 \ 美希「・・・あ・・・・・あああ・・・」 \ だけどとても痛そうな尻餅じゃないか。 \ かわいそうに。 \ 俺は無感情にホロリと来た。 \ もうちょっとの辛抱だから。 \ 太一「だから、トモダチになってくれないか?」 \ 美希「・・・PYF[E? 5・・・・4C?」 (・・・先輩? え・・・嘘?) \ 美希は自分の足の状態も把握できてない様子だ。 \ おそらくインプラントが原因だろう。 間違いない。 \ いや、原因はリバウンドだな。 きっとそうだ。 \ そして実際は「みかか」の呪縛の犠牲者なのだと俺は知っている。 \ 太一「らーららー」 \ 美希「・・・っ」 \ 動かない足を引きずって、離れようとする。 \ 太一「らーらーららーらららー」 \ 美希「EQE・・・3D・・・EQ#・・・」 (痛い・・・足・・・いたぁ・・・) \ 太一「トモダチだよキミィ」 \ トモダチはナイフで。 \ 太一「一日15分のトレーニングで全国の30万人のトモダチがな」 \ 美希「BUEW@・・・BUEW@%%%%z!!」 (来ないで・・・来ないでぇぇぇっ!!) \ 俺は美希にナイフをインストールする。 \ 太もものあたり。 \ スロットがないので、新しく増設する必要があった。 \ 美希「33###z!!」 (ああぁぁぁっ!!) \ 抜くと果てしなくジューシーだった。 \ 顔面を狙って蹴りが来た。 \ 腱が切れてるのにすごい。 \ 美希には才能がある。 \ だから俺は、足の裏を刃先で受け止めた。 \ オート串刺しだ。 \ 美希「3・・・・・・」 (あ・・・・・・) \ 貫かれた自分の足を、呆然と見つめる美希。 \ ナイフを抜くと、美希の足は完全に死んだのか、ぱたりと床に落ちた。 \ トモダチは簡単に出来そうだ。 \ 俺はゆっくり事を進めることにした。 \ 「コレ」がたいして恐ろしいものでないことはわかっている。 \ 多少の才能はあるようだけど。 \ 一度だって、恐怖を感じたことはない。 \ 太一「らー・・・・・」 \ 両手にそれぞれナイフを持つ。 \ 血抜きをしないと。 \ 美希「S@4DW・・・S@4DW?」 (どうして・・・どうして?) \ 美希「S@4DW・・・0QDF・・・RH@II:@UTzQKTU・・・、PYF[E?」 (どうして・・・わたしは・・・すぐに逃げなかったのかな・・・ね、先輩?) \ まず衣服を剥ぐ。 \ すでに抵抗はなくなっていた。 \ 美希「D@2@YT@Q@ED@・・・UKI・・・・」 (自分が大事・・・なのに・・・・) \ †が閃く。 \ 美希「z・・・EQz・・・XzXS,I:@W;F@・・・3YP@YQ@zQKIU#・・・3FF・・・」 (っ・・・いたっ・・・さっさと、逃げてれば・・・安全だったのになぁ・・・あはは・・・) \ †。 \ 美希「EQz・・・44$・・・・」 (いたっ・・・ううぅ・・・・) \ †。 \ 美希「・・・・VSLW@EG.D@DYT@・・・UTzQTO・・・」 (・・・一人で生きる自信が・・・なかったから・・・) \ †。 \ 美希「Q@TOMDTDQOGLT@EGW.zW,6MzW・・・」 (だからもしかしたら霧が生きてるって、思って・・・) \ †。 \ 美希「W@M0DQ・・・7GFO4D@(YV@MDWGWQ・・・」 (でもわたし・・・焼き払う準備もしてきてた・・・) \ †。 \ 美希「―YS4FDYW@、zW,UYSUHGZ@EWQ」 (本当は死んでるって、なんとなく気づいてた) \ †。 \ 美希「3FFFFFFFFF」 (あははははははははは) \ 美希「3FFFF、FF、FFFF・・・・」 (あはははは、はは、はははは・・・・) \ 美希「4033333zzz!!」 (うわあああああッッッ!) \ 太一「!?」 \ 美希の手が動いた。 \ 虚をつかれた。 \ dwave 2,"sound/se031.ogg" quake 3,200 側頭部に重い衝撃。 \ 脳の中心まで抜けるほどの。 \ 太一「うっ・・・・」 \ ぐらり、と傾く。 \ 視界が暗くなる。 \ かろうじて意識は失わなかった。 \ が、思わずナイフを落として手をついてしまう。 \ 太一「・・・あ、あー・・・・」 \ 美希の手に警棒。 \ 俺の頭を叩いたものだ。 \ だけど下半身がふんばれなくては、威力も乗らない。 \ 太一「痛いじゃないか・・・・っ」 \ 呼吸をすると、ズキッと痛みが走る。 \ 触れると、血が出てきた。 \ 太一「これはコブができちゃうな」 \ しかも疼痛がする。 \ 数時間後に嘔吐して死ぬ時間差トリックか。 \ ま、それまでに見破れば死ぬことはないから平気だ。 \ いいや。 \ いいや、いいや。 \ もういいや。 \ もう・・・トモダチにしてしまおう。 \ 静かで安全なトモダチに。 \ 俺の中で永遠に生き続けるトモダチにだ。 \ †――――― \ 美希「・・・・4H@z」 (・・・・うぐっ) \ 血が広がる。 \ 廊下に広がる。 \ 世界に広がる。 \ どこまでも広がってすべてになる。 \ まるで血袋。 \ トモダチには血はいらない。 \ 信じるしかないだろう。 \ だけどまだ完全じゃない。 \ 俺は最後に、渾身の力で†した。 \ 深々と。 美希は細く長いうめき声をあげた。 \ そして。 \ 美希「・・・・RGO@zQKI―――――」 (好きだったのに) \ †が止まる。 意思に反して。 \ 美希「・・・・PYF[EKBS,A)zSRGQ@zQKI・・・・」 (・・・・先輩のこと、ちょっと好きだったのに・・・・) \ 太一「・・・・・・・・・・・・」 \ 体が動かない。 \ 痺れてるみたいに。 \ けどゆっくりと、自由が戻る。 \ 動かせるようになる。 \ だって俺の筋肉なんだから。 \ だから、部活を続けようじゃありませんか。 \ †を使う。 \ じょうずに使う。 \ そして。 \ 美希「・・・・・・・・・・・」 \ 使い終えた。 \ 太一「・・・・・・・・・・・」 \ csp -1 print 1 wait 2000 lsp 6,"image/bgcc0008.jpg",0 print 1 どれくらい佇んでいたのだろう。 \ 朝になっていた。 \ ひどく、気分が悪い。 \ 吐きそうだ。 \ 陽光に焙られるのを忌避する虫のように、俺はその場を離れる。 \ ・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0014.jpg",0 print 1 店で飢えを満たす。 \ メモを見やる。 \ そうだ、こうやってツケていた。 \ すべてが、遠い過去の出来事めいて懐かしい。 \ 震える手で、ペンを取った。 \ csp -1 print 1 wait 100 彷徨う。 \ wait 1500 lsp 6,"image/bgcc0002a.jpg",0 print 1 太一「・・・・・・・・・・・・」 \ とても静かだ。 \ 夏の熱気だけが、例年通りに降り注ぐ。 \ 汗とともに、少し理性も戻ったのか。 妙に冷静だった。 \ 人類はあっとい間に滅びてしまった。 \ 原因も分からないまま。 \ 人口が減少するのは、あっという間だった。 \ 対処することも出来なかった。 \ 誰も生き残らないだろう。 誰も。 \ その構図が見えた時、俺は――― \ せいいっぱいの強さも、跡形もなく吹き飛んで。 \ 家に入るのが怖い。 \ そこに睦実さんの死体がないとは限らないからだ。 \ 記憶も定かではない。 \ ・・・・入れない。 \ 今の冷静さも、またすぐ消えてしまいそうだ。 \ ・・・・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0005a.jpg",0 print 1 坂道。 \ どこに行けばいいのか、判断できない。 \ ぼんやりと、足を動かす。 \ 厚い。 頭が痛い。 \ 太一「・・・・・・・・・・・・・ら」 \ ら? \ ・・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 商店街。 \ 誰もいない。 \ 誰か。 \ ・・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0024.jpg",0 print 1 橋を越えた町はずれで、俺は佇立する。 \ 緑の香りが、少しだけ心を包んでくれた。 \ なんだ、この世界は。 \ 唐突に絞り出されるイヤな気持ち。 \ 甘い味をした歯磨きチューブの一番奥に詰められた、コールタールを味わう。 \ ああ、もう、どうしていつもこうなっちゃうんだろう。 \ みんな狂ってるんだ。 \ そんで俺だけが正常なんだ、きっと。 \ 人間になど生まれなければ良かった―――― \ ・・・。 \ ・・・・・・。 \ ・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0000a.jpg",0 print 1 気がつくと朝になっていた。 \ 原っぱに、俺は死んだみたいに転がっていた。 \ 頭痛によって叩き起こされたようなものだ。 \ 太一「曜子ちゃん・・・曜子ちゃん・・・・」 \ 曜子「どうしたの?」 \ 太一「頭、痛い・・・」 \ あのときのように。 \ 太一「また俺・・・・・壊れちゃう」 \ もう曜子ちゃんはいなかった。 \ 「RGQ@zQKI―――」 \ なんだろう、このアルファベットは。 \ 意味がわからない。 \ 彷徨う。 \ 彷徨う。 \ 彷徨う。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0005.jpg",0 print 1 町中を歩き回って、坂道にさしかかったときだった。 \ 背後から声をかけられた。 \ 太一「・・・・・・・・・・・」 \ しばらく俺は停止していた。 \ 気配を察することもできないほど、疲弊していた。 \ 本能に従い、水分だけは補充していたが・・・・。 \ 心はもう、とうの昔に配列を損なっていたのだ。 \ とにかく声をかけられた。 \ この声は・・・・榊原先生。 \ そういえば生存者はまだいたんだ。 \ 先生は、屋上がどうの美希がどうのと言ってないように思う。 \ 俺は乾いた唇を上下に引きはがして、声を出した。 \ 太一「先生、トモダチになってください」 \ ずいぶんと待っていた。 \ なのに返事はなかった。 \ 振り向くと、誰もいなかった。 \ 先生の気配が見つからない。 \ 彼は俺に用事があったはずなのに。 \ 俺はどれくらいの時間、佇立していたんだろう。 \ あるいは――― \ そう、あるいは――― \ 太一「誰か」 \ もう無理だ。 \ ・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0015.jpg",0 print 1 気がつくと、山道に踏み込んでいた。 \ 頭痛はまだおさまらない。 \ 誰かに叩かれた即頭部が、ズキズキと疼く。 \ 頭が破裂しそうだ。 \ 歩くごとに、頭に響く。 \ だけど彷徨うことをやめられない。 \ たぶん俺は、止まったら、止まる。 \ 太一「いたい」 \ 見里「大丈夫ですか、ぺけくん?」 \ 誰もいなかった。 \ ・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0016a.jpg",0 print 1 太一「・・・・ここは?」 \ lsp 5,"image/TCCN0100b.jpg",190 print 1 七香「祠だよ」 \ 太一「そんなこと、知ってるよ。 俺の知らないことを教えてよ」 \ lsp 5,"image/TCCN0101b.jpg",190 print 1 七香「知らなーい」 \ 太一「で、誰?」 \ lsp 5,"image/TCCN0100b.jpg",190 print 1 七香「ななか」 \ csp 5 print 1 太一「・・・・・・・・・・・・」 \ wait 500 いなくなっていた。 \ ・・・・・・・・・・・・・。 \ 場所もわからない道をふらふらと歩く。 \ 頭痛と喪失感だけの俺だ。 \ 太一「・・・・・」 \ それは人ではないのだろう、きっと。 \ 人がいなければ骸のような作法にのっとる必要はない。 \ 空虚な演出は、文字通り無意味になる。 \ 聞く者もない。 \ 太一「・・・・」 \ 消してくれ。 \ みんな、消してくれ。 \ 俺は願った。 \ 世界のすべてを、俺の前から消してくれ。 \ 走り出す。 \ 途方もない苦痛が、頭の芯に響く。 \ 構わずに走る。 \ lsp 6,"image/bgcc0001.jpg",0 print 1 街を視た――― \ lsp 6,"image/bgcc0001.jpg",0 print 1 その瞬間、何かが起こった。 \ wait 500 lsp 6,"image/bgcc0001b0.jpg",0 print 1 lsp 6,"image/bgcc0001b0s.jpg",0 print 1 lsp 6,"image/bgcc0001b0.jpg",0 print 1 lsp 6,"image/bgcc0001.jpg",0 print 1 何者かが、あるいは偶然という神が、二枚の紙を重ねて画鋲で射止めた。 \ すると8つの気配が出現した。 \ 瞬間的に、俺は気配を断つ。 \ 本能だ。 \ 8つの気配。 \ いや・・・・ありえない。 \ 気配を具現するなんて器用なことはできない。 \ 観念の虚像ならともかく。 \ 太一「ううう・・・ううぅぅぅ・・・・」 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0015a.jpg",0 print 1 山をおりる。 \ 早足に。 \ すべてがイッちゃってる。 \ 俺のための確かなものは何もない。 \ もう気配は探るまい。 \ こわいよ。 \ こわいんだ。 \ ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0011a.jpg",0 print 1 逃げ込むように学校に来ていた。 \ 美希と会うために廊下に行く。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0008a.jpg",0 print 1 移動していないなら、まだそこにいてくれるはずだった。 \ だが。 \ 美希は永遠になっていた。 \ 永遠になったからには死体はない。 \ 必要ないからだ。 \ 永遠とはそうしたものだ。 \ 永遠化したなら、移動できないはずの美希がいないのも納得できる。 \ だから良かったと思う。 \ 正直、美希後の美希を見るのはつらい。 \ 美希前だったら良かったのに。 \ 本当、そう思う。 \ なぜ? \ なぜあの子が犠牲にならなきゃいけなかった? \ 気持ち悪くなってくる。 \ 絶対にそんなことは許してはいけない。 \ ら抜き言葉と同じくらい、許してはいけない。 \ そう、ら抜き言葉を気にしすぎる保守的な連中と同じくらい、許してはいけないのである。 \ だから俺は高らかに「ら」だけを歌い続ける。 \ 乾いた血、懐かしい。 \ 全部こうなら良かったのに。 \ そのまま、屋上に足を向けた。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0007fa.jpg",0 print 1 トモダチの塔はない。 \ 燃えたから。 \ だけど、残骸さえもないのは? \ 太一「・・・・・・・・・」 \ 形跡さえない。 \ 理解も納得もできない。 \ 怖くなってくる。 \ 怖い。怖い。 \ 志村現象だ。 \ 一度気づいたら、すべてが崩壊してしまう。 \ ・・・・・・・・・・・・・。 \ csp -1 print 1 wait 1000 lsp 6,"image/bgcc0000b.jpg",0 print 1 濃密な液が緋色さえも塗りつぶした頃、俺は自宅でもある町外れの原っぱに横たわっていた。 \ 力が出ない。 \ 頭痛もひどい。 \ 動けない。 \ そんな俺に出来ることは、思い出すことだけだった。 \ 記憶。 \ ただそれだけが、救いではないか。 \ 徘徊し、彼らと出会いでもしたなら、どんな恐ろしい狂気が俺を襲うか知れない。 \ もういい。 \ 終わりたい。 \ もしかしたら楽しかった日々を夢想した。 \ 思い描いた。 \ 可能性を懐かしんだ。 \ パッチワークのように張り合わせた。 \ ギャグを繰り出して、セクハラをした。 \ あるいは、完全ではないとしても。 \ 楽しい可能性であることに違いはない。 \ 人間すげえ。 \ 絆すげえ。 \ 人と人が支え合うってすげえ。 \ マジ、すげえ―――― \ csp -1 print 1 wait 3000 bgm "bgm/bgm021.ogg" lsp 6,"image/bgcc0000c.jpg",0 print 1 あれから、どれだけの時間が経過したのか。 \ 俺はそのままの場所にいた。 \ 今日は何日だったっけ? \ 曜日感覚がない。 \ 自分が人間ではなくなってしまったかのような感覚さえある。 \ 人でなければ何なのか? \ 神? \ そんな陳腐なことを、誰が言えるのだ。 \ 神とは現象だ。 \ だから俺は現象なのかもしれない。 \ その解釈は、美味だった。 \ 暑い。 \ 日差し。 \ 焼かれる。 \ 俺は、焼かれる。 \ 罪人だから。 \ 当然の報い。 \ だけど、苦しい。 \ 「RGQ@zQKI―――」 \ この言葉だけが、妙に残っている。 \ そう。 俺は、ちゃんと聞いていたはずなのだ。 \ 思い出す。 \ ゆっくりと、慎重に。 \ すくいあげるのだ。 \ wait 500 「RGだzQKI―――」 \ wait 1000 「RきだっQKに―――」 \ wait 2000 「好きだったのに―――」 \ stop wait 2000 bgm "bgm/bgm013.ogg" 両手で形作った器に、その美しい言葉は、砂漠の水のようにきらめいた。 \ 太一「俺を・・・好き?」 \ 声がひりつく。 \ 太一「こんな・・・俺を?」 \ 太一「ああ・・・ああ・・嬉しい・・・嬉しいな・・・・」 \ 嬉しい。 \ 夢なら覚めないで。いや、むしろ覚めてくれ。 \ 世界はこんなに嬉しいのだから。 \ またなんでもない毎日を、続ける喜びがあるのだから。 \ 次はもうちょっとうまくやれると思うから。 \ 繰り返したい。 \ 転生するなら次は「たにし」になって何も考えずに暮らそうとも考えもしたが、また人間になってもいいかなあと思う。 \ 太一「はは・・・・」 \ 太一「・・・・・・・は・・・・・・・・・・・・」 \ 頭痛と熱でもう。 \ 俺はいろいろな幻覚を見た。 \ 自覚できないうわごとを発した。 \ 熱に翻弄される。 \ 脳がとける。 \ だけど最後に俺は少しだけ―――― \ 太一「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 \ wait 2000 return